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2009年 11月 29日 ( 3 )

11月29日(日)続々

頭の中には確かなものなどは何一つなく、私は今ただ、常に冷えているみたいな両足を暖めている。

けれど、そのガスストーブが暑すぎるのか犬は少し離れた敷物の上にいる。まるで羽を休めている一羽の鳥のようだ。腹部に巻かれた包帯から縫合された患部が3センチほど顔を出している。術語の経過はよい方のように思われる。尿は多めだが、それほど水ばかり飲むという風でもない。水の量には制限が無くなった。それを「自由飲水」と呼ぶらしい。吠え声も出た。

〈依存症者への手助けの件①〉
2時過ぎにオッサンの場所に行き、4時過ぎにそこを出た。
小さな弁当箱にご飯、味噌付け、ハヤトウリの酢の物、キンピラごぼう、大根の煮付けを詰めた。味噌漬け以外は手製だった。アパート用のゴミ置場の脇にチャリを停めると、ゴミバケツに入り切らない、いいちこの瓶が3本かそこらがあった。
「ゴミ自分で出したんだね?」
「うん、出した」と答えた。

〈依存症者への手助けの件②〉
「ごめん、やることやらせて」と私はシーツとピロカバーをはがして、服を着替えさせた。それをコインランドリーに運ぶ時、そうしながら、それがどうして私なのだろうと思った。乾燥機に入れないと言うので「帰りの方が重いから一緒に運んでね」と私が提案した。4、50分後にそうした。
「こっちの道から行く」と言う。
「遠回りだよ」
「うん」古い感じのトレーナーが寒々しそうな滲んだ黒色をしていた。左肩を落とした歩き方。一緒に歩くのは久しぶりだ。
「あ、タバコ買うの?」そう、と頷いた顔は私のずっと遠くに見えた。気がつくと私たちは手もつないでいない。右手はポケットの中に隠れたままだ。左手の方は知らない。
酒屋に入って行った。
「いいちこ、ありますか? それとキャスターマイルドください」はっきりした声でそう言った。
「瓶でいいですか?」店主が暗い店の中を数歩だけ歩いた。

「僕の事をどう思う?」
「酔っぱらい」即座に私は答えた。
「ただの酔っぱらい?」少し意外そうに質問した。
「愛すべき酔っぱらい」ビッグブックに出て来るような台詞だ、と思いながら私は言った。

「君を通じてしか世界につながっていないような気がするんだ」今日もまた、そんな事を言った。それを理解しようと私は思った。理解できたら、と思う。そんな事ってあり得るのだろうか、とも思う。なぜなら自分とは何者なのかを、実はあまりにも知らないのだから。

自分の事を他者の方が知っているという不思議。
性愛も、場面場面ではその一形態のうちのひとつなのだろう。
「あんたの事は、ちゃんと知ってるよ」
困るほどに、その言葉を受け入れるしかないのだ。

〈依存症者への手助けの件③〉
少し気になったのは、最後に半乾きの洗濯物をベランダに干したのも私だった。でも考えようによっては、、、。
「あの、でも、段々といろいろ出来るようになるよね」と私が言った。
「うん」という返事が聞こえた。その数秒後に私はもうドアの外にいた。
何かが知らない所で変わってほしい、と心から思う。そうであったら!
11月29日(日)続

昨日、私は自分の家の掃除を終えていた。その時のダストタンクに溜まった塵の分量で、掃除の成果が評価できるように思う。家具の裏側まで攻めれば、あるいは椅子をずらして、その下に身を潜めている塵を吸い込めば、当然その透明プラスチックの筒が満タンに近づくわけだ。ちなみに昨日の気力は低く、達成度は低迷していた。それもよしとした。ほどほどに。

人が生活すれば埃も塵も湧いて出るもので、それはどこか皮膚の垢に似ていると気付いた。昨日病院の待合室で読んだ女性誌の記事によると、湯船に浸かる入浴を行えば、垢の90%は除去されると専門家は言う。だから普通に生活していて石けんで身体を洗うのは、3回に1回でよいのだそうだ。シャワーは知らない。だから、要するにほどほどに。

「あんたが凝り性でよかった」とある時息子が私に言った。誉められたように感じた。その時たぶん、家のどこかの掃除やら品物の整理をズンズンと行っているか、終了していたのだろう。つまり、掃除や片付けを徹底的にやるという意味らしい。しかし、それも気分が乗った時に限定されるのだが。

今はどうだろう? もしやるとしたらオッサンの家のシーツ類の洗濯とか、着ているもの、、、。しかし、それは、、、。それはアルコール依存症者に対して「本人が行うべきこと」なのだ。朝の電話でその話をした。

「あんたがいれば、俺も少しは手伝うさ」と答えた。「そうかい」と私は応じ、今日行くか行かないかは犬の診察結果次第で、と釘を刺した感じの約束にした。掃除についての記事を書いている途中にかかって来た電話で、別の方向に逸れてしまった。だが何せ、すべてほどほどに、だ。

まあまあの日和。何をするにせよ。
11月29日(日)

起床してから、かれこれ2時間以上たち、断片的な記憶になってしまった。最も印象に残っている場面があった。

豪雨の後なのだろうか、黒光した泥まみれの車道を苦労して横断している自分の姿だった。私は自転車に似た乗り物にまたがっている。その服装ときたら、泥水よりもさらに漆黒色をしたウールの上等なロングコートなのだ。おまけに襟元に同布の長く垂れたマフラーをしていた。それは見事に泥水を吸い込み、その重さが動作を妨害する。コートの裾だって大変な事になっているんだろう。しかし、その道路を横切るという仕事は、かなり切迫していたらしい。漕いでは漕いだ。珍しいのだろうか、数人の人々が私がそうするのを傍観していた。たぶん横断するという目的は達せられたが、その後も道のりは続いていた。

椎名誠とC・W・ニコルが連れ立ってカフェにいる。髪が乱れて服も。どうやら二人は歓談しているようだ。二度程も見た。だから私は少し前から気づいているのだが、声を掛けそびれていた。次のショットに替わった。

寝起きの時点では、もう一つ二つの記憶があった。しかし、もう遅い。「忘却物集積所」が累々として眼下にあるだけ。