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2011.9.14の傾聴ボランティア

9月14日(水)

最初のお一人は初対面の82歳の男性で、私が挨拶するまではドストエフスキーの『白痴』を開いていらした。旧制中高でされていた蹴球(サッカー)の話、万葉集や古典文学の話、ヨーロッパ人特にスラブ系民族の話などをされた。窓の外を指差され「あの雲を見て、人が何かを感じるか感じないかだ」と説明された。私はその方の褐色がかった歯並びをすこし見たり、きれいに切りそろえた爪のある長い美しい二つの掌も見た。「何と説明したらいいのだろう」と一瞬だけ虚空に視線をやったあと、話を続ける。終わった後にニヤッと悪戯じみた微笑みを必ずした。「本を1ヶ月に1冊読めるとしたって人は一生にたった100冊しか読めない。ここに来て時間があるので本と付き合っている」とおっしゃってまた少し笑った。


お二人目とは、短い散歩に出た。幼稚園の年長組が公園でかくれんぼをちょうど終えたときだった。その方の車椅子を7、8人の幼児が囲んだ。「お名前は?」と私が聞くと、それぞれ競うように「私は○○○○です。○歳です。誕生日は○月○日です」と続けた。「はいっ」と言ってクローバーの葉をくれるので「こちらのオバちゃんにあげて」と私が言った。ビービー弾を1粒あげる子もいた。子どもたちは園に帰って行った。歩道沿いに移動パン屋が来ていたので私たちは昼食ですこし摘む甘いパンを買って帰った。彼女は何もかも喜んでいらした。ご自分の散歩を「日光消毒」とおっしゃり、それは適切な表現だと思った。
by necojill | 2011-09-14 13:46 | 書き残し | Comments(0)