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1月26日の傾聴ボラ(2)故人に生き写しの方がいらした

1月26日(水)

びっくりした。
この方をお持ち帰りしたい、そんなご老人がいらした。
新しい入所者様のようだ。車椅子が寝椅子のような傾斜に倒れていて、そのまま私たちのいる6人掛けテーブルに治まっていらっしゃる。80歳はとうに越していらっしゃるのだろう。日本人離れした深い掘り、深い哀しみと疲れの中に墜ちているご様子だ。色々な不自由が全身を縛っている。どのような人生を送られ、その後この場所に到着されたのだろうか? 


それにしても、もし故人が命を落とさずに、20年30年存命してくれたら、きっとこの方がそうなのだ。
私は凝視した。失礼だとは承知で。職員さんたちに分からないように、と思いながら。ハゲていて周囲の少しの髪が伸びた状態の頭部。欠け始めた月を横から見たような面長な顔。窪んだ両眼の位置と、白髪の混ざった顎髭。鼻が高い。しかし、、、微動だにしない。


「XXさん、お風呂入りましょうか?」
同意されたのだろう。そのまま寝椅子のような車椅子はTVのあるホールから姿を消した。
夢のような一瞬の出来事だった。


数十分が経ち、その同じ紳士が再び運ばれて来た。何か質量が半分になってしまったような感じがした。TVの前にいったん置かれた。微動だにしない。こっそりジロジロと私は視線を送った。着ている服は寛いだ雰囲気のジャージでとても地味で質素だった。スリッパの中に靴下を履いた足が何の主張もせず収まっている。でもすべてのそうした行為はテスト時間中のカンニング行為に似ていた。


だって私はこのホームにボランティアをしに来ながらも、どこか「余計なお世話をしている」という感覚があって。それに輪をかけたようなカンニングだったのだもの。


気がつくとその男の人は、スタッフによってまた別の何処かに運搬されて行ってしまった。いつもの私たちが残った。きっと夢の中の出来事だった。
by necojill | 2011-01-27 17:54 | 書き残し | Comments(0)