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ご冥福をお祈り申し上げます

7月23日(金)

瞼が肥厚している。唇が日焼けで荒れていておまけに軽い頭痛だ。入院の支度を終え久しぶりに自宅の風呂に入ると、湯船の内側に微量の黴があった。上がる前に浴室全体を軽く掃除した。


午前10時前後に来院して下さい、と言われている。
今回は鎖骨骨折後、施術されたキリシュナ鋼線を抜くオペだ。私は数時間後医師たちに弄ばれる。きっと苦痛を堪能するのだろう、私自身に向けられた医学に感謝しつつ。もう1、2時間ある。


何といい人たちだろう。
昨日の出来事を想い出していた。札幌からいらした妹さんたち。
「ごめんなさいね」と私に何度も言った。「しつこい位電話したの」本当にこっちこそ、、。「兄の最後に会えなくてほんとに辛いでしょう」「そんな、もう充分(生前に)見てますから」笑って答えた。私は外出しており、息子は固定電話には出ないという規則を自分の中に作っていた。一度、友人から電話があり、怖さを憶えてしまっていたので、それ以来その方法を採用していた。それを作ったのも私自身だ。


「とても綺麗だったの」「痩せてしまって、、」「そう。穏やかな表情で」「苦しんで、、いなかった、、、」「ええ、もちろんお化粧してその人が言ってた。どちらのお国の方ですか、って外人に見えたらしいの」「そうですか」「頭にお気に入りの帽子を被せて髭はトレードマークかしら。タバコを数本くわえさせたわ」数本も? 「お酒も、本当はダメなお酒だけど、飲ませて体にも掛けてあげたの」腕を振りお酒の瓶を振る動作をされた。私は頷いた。


「とても汚れていて」
シャツは心臓マッサージのために切り裂かれていたらしい。誰かが通報してくれた。たった一種類の外出。近所のコンビニに酒を買いに行く途中、倒れた。倒れていたのは、あのレジデンスのゴミ置場だろうか。コンクリートの立ち上がりが30センチほどある。私たちはかつてそこに座って休んだ事がある。何度目かの入退院の途中で「酒買いに行く」というのに付き合い、「疲れた、少し休む」と言って腰掛けた場所だ。あるいは違う場所、道路かも知れない。何十分か何時間そうしていたのだろう。苦痛は計り知れない。それはどんなに辛かっただろう。


運ばれた医療機関では、瞳孔はもう開いていたが心肺停止直前であったらしい。身分を証明するもの、たぶん運転免許証を持参していたので、警察は北海道のご親族に連絡した。「今直ぐいらしても多分間に合わないでしょう、と言われました」翌朝の便で到着された時には亡くなっていた。福祉事務所に連絡する用事があり、そこで私の話を聞かれた。「お付き合いされている方がいて心配されてるって聞きました」「ああ、兄ちゃんの部屋の壁にあった写真の人って思いました」その満面の笑みで頬に熱いキスをされている人は元カノさんだったので、初対面で私たちが会った時に、すぐその話をした。「写真とはお顔が違う、ですよね」「ええ、違います」


死因を特定出来ないので、検査解剖をしたらしい。結果を知らされるまで2週間程がかかる。「病気を沢山持っていたものね。兄ちゃん」「、、、そうですね」本当にそうだ。知っていた。充分に知っていて、理解していた。健康な脳でそれを理解出来る人間がここにいた。


いま私の頭は完全に「たられば」思考になっている。
不毛さは、わかっている。
何と取り留めのない堂々巡り。無秩序で無益。
それより何より祈りなんて何の役にも立たなかったじゃない、って言いたい。でも、、AAの本が沢山棚にあって驚いた。その内の数冊かを貰う事にした。
「これお酒の本、、、いまさら読んでも」と私は苦笑した。その時、妹さんがたも同意したように感じた。
本当にいいご兄妹だ、と心から思った。

ご冥福をあらためてお祈り申し上げます。
(入院のためしばらく休みます)
by necojill | 2010-07-23 09:06 | 書き残し | Comments(1)
Commented by ひいらぎ at 2010-07-23 09:47 x
月並みな表現だけれど、これは終わりではなく始まり。
それはともあれ、彼にとっては苦しみの終わりであったことも確かです。