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コロッケ屋とセンベイ屋

1月7日(木)続々

「で、帰りはどこかに行くの?」精神病院の中庭で、知り合いのオッサンが途絶えがちの会話をつないでくれた。
「どうして?」そこにしばしば面会に来ている私が聞いた。表面的な感じの声。そう聞こえないといいけど。
「前、色々寄ってたでしょう。カレー屋とか」ああそういう意味。
「わかんない」実は昨夜、例の『世田谷区全図』を薄暗いベッドの上で広げていた。ルートに関しては楽しく迷うのだが、店屋に関してはどうでもいい。
「ああ、環七は鬼門なの」そう言えば去年の夏に交通事故に遭ってからそこは通っていない。


今日は結局、東京農大や馬事公苑の脇を通って呑み川緑道で帰った。途中で小さな肉屋があってジャンボコロッケを60円で売っていた。
「すみません」
「はいはい、いらっしゃい」奥からおかみさんが出て来た。コロッケを包みながら私に話しかけて来る。
「その自転車すごいわね。前屈みで乗るんでしょ」
「いえいえ」ドロップハンドルでない事を説明した。
「でもそれ、どうやって乗るの?」
「普通にですよ」笑いながら私は彼女の前でヨッコラショとまたがった。コロッケはとても美味しかった。それを道で食べてしまった。

次にセンベイ屋の前にチャリを停めるとオヤジさんが話しかけて来た。
「今日、問屋行って来たとこ。全部出来立てだよ」私は1袋210円壊れセンベイを指差した。
「これは美味しいよ。問屋に二箱くれって言っても一箱しかダメだってさ」
他の3袋500円のセンベイもどれも美味しそうだった。しかし家路はそんなに近く無い。
「もっと買いたいですが、、遠くて。目黒通りの方なんです」
「そうなの。運動で来たの?」用事があったと言うと、気をつけてと言われた。


どちらも犬には気付いていない。薄茶色の犬バッグの上から同色のスエードのハーフジャケットを着ていた。自転車用ヘルメットを被っていると、その方がベターだと常々言っているオッサンを近くに感じる。コロッケ屋やセンベイ屋だって同じ様なものだ。近くに感じる。たぶん二回目に会ったら私の事を思い出してくれると思う。
by necojill | 2010-01-07 21:52 | 書き残し | Comments(0)